2015年10月26日月曜日

門を開けば福寿多し〜ネガティブな潜在能力をポジティブに変えるコーチングスキル



「門を開けば福寿多し」という禅語の意味は、読んで字の如くです。

個人でも問題を解決したい人は、門を叩きます。問題があっても問題と感じない人は門も叩かないので門は開かれません。コーチングはまさしくこの状態を言い表しています。

苦しい時ほど、あからさまにする。

ところが、苦しくてもあからさまにしないことが罷り通るとしたら、その責任はどこにあるのでしょう。もちろん個人にありますが、それ以上に会社の仕組みに問題があると考えるのが、「成長する会社」の考え方なのです。

コーチングとは、やる気を引き出す技術ですが、そのために相手の話をよく聞き理解することから始めます。ここでファシリテーターのスキルが発揮されます。相手が気付いていない潜在的能力を引き出し、相手を信頼し任せることで、目標達成に向けて動機付けていくコミュニケーションスキルです。

「潜在的能力」という言葉にはふたつの意味があります。
  • まだ使われていない未知の能力
  • 顕在化した能力を十分に発揮させないネガティブな能力

一般にビジネスシーンで使われる「潜在的能力」は「まだ使われていない未知の能力」をいうことが多いのですが、やる気を損なうのは「顕在化した能力を十分に発揮させないネガティブな能力」です。

この能力はとても巧妙で、風邪をひいたり病気になることで阻害することも少なくありません。人のせいにする。「できない条件を引っ張り出して無理だ」という。」「どうせできない。」といった言葉は、このネガティブな潜在能力です。

このようなネガティブな意識をできる限り減らし、「やってみよう」「きっと大丈夫」とポジティブな意欲に変えるのが、ファシリテーターの潜在能力開発なのです。

これは他者ができることではないので、本人の主体性に任すしかありません。
ネガティブなことを並べる人に、ポジティブな考えを伝えても、「そうは言っても」と言い出されると、もうそれ以上、どうにも進まないのです。
だから「こうあるべき」と教えずに、「我が社ではこう考えますが、あなたはどう考えますか?」と問いかけ、意見を掘り下げて、会社の在り方、価値観を示し、本人の意識改革に持っていくのです。

コーチングとは、「大切な人を目的地まで送り届ける」だと言いましたが、まさしくその通りなのです。そしてコーチングがマネジメントの核だというのも、その通りなのです。さらにコーチングに類似したものにカウンセリング、メンタリングがあります。コーチングが数値目標を重視しているのに対して、カウンセリング、メンタリングは心の健康維持に特化しています。これらを完全に切り離すことができれば進め方も容易になりますが、混沌とした状態であればあるほど仕事は進めにくくなります。

このような状態にならないためにも「採用」段階から戦略的に進めていく仕組みが必要です。
戦略的仕組みの中核となるのが、「在り方」「価値観」なのです。「在り方」「価値観」が明確でなく、普段、社内の会話でほとんど出ることがないとすれば、その段階で競争力低下を予言しているのと同じなのです。

なぜなら個人のネガティブな潜在能力が会社内になだれこんでくる危険があるからです。

上司が相手を理解しないまま、その人の強みに目を向けず、「あいつは駄目だ」と烙印を押すケースはどこにもあります。そしてその通りかもしれませんが、そこに至る以前に会社として、そんなことにならない「仕組み」を構築してマネジメントしているか、どうかが重要なのです。

していない場合には、個人のネガティブな潜在能力が会社内になだれこんでくることを覚悟して、その対策をしなければなりません。

それは「採用」から始まっていますが、そんなこともなく採用し続ける仕組みこそ反省する課題なのです。物事には原理原則」があります。それを無視していて、はなるものもならなくなってしまいます。


この時に役立つのがPAC交流(ストローク)です。お話したように、交流パターンが交叉するとコミュニケーションは必ずこじれます。ですので平行的なコミュニケーションができているか注意を払いながら、コミュニケーションを練習します。回数を重ねるほど後天的な能力として身につき習慣が自分のものになります。

2015年10月20日火曜日

大地黄金〜コーチングの真髄












大地黄金という漸悟があります。それがどこであっても、自分が置かれている場所、いまいるところで全知全能、精一杯尽くせば、やがてはその場所が黄金のように光輝いてくるという意味です。

コーチングは受ける側も施す側も「大地黄金」の典型的な事例で、この考えのないコーチングはコーチングになりません。

コーチングとは、「大切な人を目的地まで送り届ける」というのが本来の意味で、Coach (馬車)から派生した言葉です。

コーチングという言葉はスポーツの分野では昔から使われていましたが、ハーバード大学のマイルス・メイスが著書で使用したことから拡散しました。
「マネジメントの中心は人間であり、人間中心のマネジメントの中でコーチングは重要なスキルである」と使用したのです。

日本のプロ野球と大リーガーでも微妙にコーチの役割が違うように、コーチングの定義はさまざまで、アプローチの方法は違っても、その本分はコーチングする相手の能力とモチベーションを高めて、持てる能力を発揮できるようにサポートするコミュニケーションスキルであることに間違いはありません。

重要なことは、主体はコーチにあるのではなく、サポートを受ける本人にすべての答えがあることです。先に説明したようにファシリテーターが参加メンバーで構成されたチームをサポートするときに、指示したり、教えたりせずに、質問を積み重ねて、相手の考えを引きだして、能力を引き出していく手法に通じています。

さらに重要なポイントは唯一の答えを求めるわけでなく、答えは必ずしも一つではない点です。相手(個人またはチーム)の合意が答えになる点です。

それだけに、在り方、価値観が、全く違う相手を組織の在り方、価値観と違っていれば、ハードなプロセスを辿ることになるので、組織の在り方、さらに価値観を明確にしておかなければ、全くベクトルの合わない相手を育てるはめになります。

ですから現実の問題として、人を育てる前に、組織の在り方、さらに価値観を整えることが、コーチングを機能させる条件になるのです。この基本的な前提条件を無視してしまうと組織は成長しなくなるということです。もちろん、コーチングやファシリテーターを度外視して、旧態依然とした管理方法で成長させることも可能でしょうが、その方法が内包しているリスクはいつか必ず組織のリスクとなって露出してきます。特に未曾有の高齢化社会、結婚を求めず、子育ても求めない価値観の大転換を迎えた現在では、急速に負の循環となるでしょう。

こんな時代に、組織に身を寄せる者は、時に板挟みになることも少なくないでしょう。しかし、そんな時にこそ、威力を発揮するのが、マネジメンサイクルの真髄であるPDCAなのです。





指示命令で人を動かすのではなく、マネジメントの真髄、PDCAを使うことで、相手に主体性を持たせて自主的に考えて行動するように促すのです、つまりどのような組織でも求めている姿を現実にする手法を使うことで、どのようなマネジャーにもアプローチできるのです。PDCAは使えないという人はたくさんいます。その原因は、いくつもありますが、主体性を相手に持たせずに、叱咤激励する道具に使っているからです。

PDCAのP(PLAN)は、計画のことですが、その前提に目標が内包されています。ところが、まだまだ、この意味が理解できていない人がたくさんいることには驚かされるのが現実です。P(プラン)は目標だけの場合もあれば、計画だけの場合もあります。どちらが欠けてもP(プラン)にはなりません。目標数値だけあっても、どのような在り方で、どのような価値観で、どのように行動するのかが明確になっていなければ、動きようがないからです。これでは実行した後に来るCHECK(チエック)ができないので、問題があろうが、なかろうが、やりっぱなしになります。つまり人が成長しないということです。

人が成長しないので、指示命令が必要になりますが、これだけだと、ますます自主性も、自ら考えることもないので、管理者に成長することはありません。しかし組織が成長するには、拡大が不可欠なので、管理者が必要になります。ところが管理者にふさわしい能力を身につけないまま、管理者になるので、組織は機能停止に陥ります。これでは組織は拡大できなくなりますが、指示命令で動かしてきた組織は、その根本的な原因を把握できる能力を欠いています。もともと自主性も、自ら考えることの重要性を軽く見なしていたからです。

DO(実行)の後に来るCHECK(調査・分析)は、目標と現状のギャップ、すなわち問題とその原因を探ります。この作業は次のACTION(行動)を正すために不可欠な重要な条件ですが、P(計画)が曖昧で達成が容易にしないDO(実行)を繰り返しても、そもそものP(計画)が曖昧ということは、その段階であらゆる可能性を引き出すチャンスであるCHECK(調査・分析)も出来ないことを示唆しているので、次のACTION(行動)を正すことができないので、すでに答えはやる前に出ているのです。すでに結果が出ていることを、そのままやるというのは、「やる気がない」以外に解釈の使用がないのです。

このことは人生そのものに通じています。チャンスを引き出すには、チャンスを引き出せる仕組みを自分のなかに準備しましょう。PDCAです。PDCAは自らを大切な人として扱ってもらえるようにする貴重なツールなのです。


次回は、コーチングを機能させるストロークについて説明します。